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№6 茨城県最大級のお祭り「石岡のおまつり」レポート

「正月やお盆には帰省しなくても、おまつりには帰る」と石岡で生まれ育った方が明言するほど地元で親しまれている石岡のおまつり。関東三大祭りのひとつに数えられるほど盛大なこのお祭りの様子を、石岡の歴史と合わせてご紹介します。市内全体が盛り上がるこのお祭りの魅力、知ればあなたも必ず行きたくなるはず!

 

石岡のおまつりのはじまり


現在の茨城県が常陸国と呼ばれていた約1,300年前の7世紀、常陸国風土記で「常世の国」と評されるほど豊かな土地である現在の石岡市に常陸国総社宮が建立されました。
総社とは、それぞれの律令国に鎮まる八百万の神々を国衙(こくが)近くの一ヶ所に合祀した神社であり、全国で55社が確認されています。
祭祀を中断する総社がある中で、常陸国総社宮は、創建以来絶えることなく「国府の神祭り」を続けています。その現在の形が最大の祭典である9月の例大祭であり、地域を挙げて祝われるため「石岡のおまつり」とも呼ばれています。

 

石岡のおまつりとはどんなお祭りなのか


石岡のおまつりは、正式には「常陸國總社宮例大祭」(ひたちのくにそうじゃぐうれいたいさい)として、石岡市に鎮座する常陸國總社宮のお祭りとして開催されているものです。
常陸國總社宮の行事に石岡市内の様々な伝統行事・文化が加わり、現在のような石岡市全体で盛り上がるお祭りへと発展しています。神輿・山車・獅子舞など様々な伝統文化が集結した珍しいお祭りとして存在しているのはこのような理由からです。

常陸國總社宮境内の隋神門(ずいしんもん)

 

「常陸國總社宮」の「總社(そうしゃ)」とは、地域の神社・祭神を一箇所に集めて祀った神社のことです。平安時代に、徒歩では、地域の神社を全て参拝することが難しかったため,このような総社を建てることで一気に巡礼することを可能にしていました。
なお、東京都(武蔵国)の総社は府中の大國魂神社(おおくにたまじんじゃ)です。

 

平成30年度は9月15日から17日の3日間で開催されました。様々な行事が行われる中で、2日目に開催される大獅子パレードと山車の曳き回しはクライマックスとして盛り上がります。開催期間中は40万人を超える人出で賑わい、「関東三大祭り」(※諸説あります)の1つにも数えられています。

 

神輿!山車!獅子舞!開催期間中の行事を紹介!

3日間の開催期間中は様々な行事が開催されました。

9月15日(土) 神幸祭(じんこうさい)


お祭りの初日には、大神輿のお祓いをするなど、重要な神事が執り行われます。
その後、全町会の幌獅子が石岡小学校に揃い、2時間かけて渡御を行い、年番町会の仮殿に向かいます。

渡御を終え、仮殿に収められた大神輿。官幣大社(かんぺいたいしゃ)の証として「十六菊花紋」をつけている

9月16日(日) 奉祝祭(ほうしゅくさい)


この日は、全獅子が行列を作り御幸(みゆき)通りを練り歩きます。幌獅子パレードや山車パレードが行われ、夜遅くまで盛り上がります。

9月17日(月) 還幸祭(かんこうさい)

最終日は、仮殿に鎮座する大神輿が神社までお戻りになり、次の年の町会への引継式が行われます。

 

 

2日目の幌獅子大行列と山車大行列をレポート!
昼の部は幌獅子がメイン!


14:00頃に駅に到着すると既に駅前広場に幌獅子が集まってきています。
この「幌獅子(ほろしし)」は全国的にも珍しく、大きな獅子頭の後ろには移動式の小屋が付いており、その小屋の中で太鼓などを括り付け、お囃子を演奏しながら進んでいきます。

駅前に勢ぞろいする幌獅子


獅子頭は大きなものでは30キロ近くにもなり、地面すれすれの所で首を左右に揺らしながら舞を演じていきます。
石岡市内には50近くの幌獅子があり、それぞれ表情などに違いがあります。

15:00になると大行列が開始。駅前の大通りを順番に沿って進んでいきます。
この大通りを進むと国府三丁目の交差点にぶつかります。それぞれの幌獅子は左右に分かれ、自分達の町会へと帰っていきます。

幌獅子大行列を進む幌獅子

幌獅子大行列を進む幌獅子

続々と集まる各町会の高張提灯

 

夜を盛り上げるのはやっぱり山車!


石岡のおまつりのクライマックスの一つとも言えるのが2日目の夜に開催される山車大行列。まず、駅前に全ての山車が揃い、一斉にお囃子を演じます。 この時、各山車の前には提灯を持った女性が集まり、お囃子に合わせて掛け声をかけていきます。また、山車の上では、狐やひょっとこが出て踊ります。山車ごとに掛け声が異なり、見ごたえがあります。

駅前を出発した山車は続々と大通りを進み、最後は自分達の町会へと帰っていきます。夜の街を提灯で彩られた山車が進んでいく様子は荘厳の一言。まさに2日目のクライマックスです。
石岡の山車は2〜3層構造となっており、最上層には町会ごとに2m近くの人形を置きます。
その下の層では、お囃子と踊りが演じられます。「石岡囃子」と言われ、このリズムに合わせて「ひょっとこ」や「一文字」「女狐」など様々なバリエーションの踊りが演じられます。

 

毎年お神輿が来る場所は変わる?年番町会の役割とは…

石岡のおまつりでは、毎年15の町会から「年番町会」を選出し、その年の開催を任せます。
年番町会には、各行事の取り仕切りなど多くの仕事がありますが、重要な仕事の一つが町会に「仮殿」を設けることです。
「仮殿」とは、お祭りの際にお神輿に乗った神様が休憩するために立ち寄る場所(御旅所)になります。
石岡のおまつりでは、初日の15日に神社を出発した大神輿は市内を渡御しながらこの仮殿を目指します。
仮殿は、今年の年番町会の幸町(さいわいちょう)内に建てられました。仮とはいえ、神様が立ち寄る場所になるため、敷地内には鳥居はもちろんのこと、苔や池、金魚まで用意されます。


仮殿と大神輿


仮殿のために作られた池。中には金魚が泳いでいます

年番町会に選ばれるのは、15年に1度。とても大切な役割で、誇りを持って準備を進めていきます。
3日間開催されるこのお祭りでは、石岡の地域の様々な伝統行事が融合して現在のような形になりました。3日間の日程でいつ遊びに行っても楽しめる石岡のおまつり。
来年は皆さんも行かれてはいかがでしょうか。