不思議な茶碗
フシギ ナ チャワン
こっけいな人・愚かな人が登場するおはなし|殿様や武将が登場するおはなし
再話文
旧玉造町今の行方市に住む方から聞いたお話だそうです。
むかし、あるところの茶店へ殿さまがお供を2、3人連れて立ち寄りました。
茶店のおばあさんは茶渋で汚れた茶碗に茶をいれておそるおそる殿さまに差し出しました。
殿さまは不思議そうにその茶碗を外側から内側までためつすがめつ丹念にのぞきました。そしてだまって茶をすすりお茶代を置いて去っていきました。
おばあさんはこれを見て「きっとこの茶碗には何か訳があるに違いない。よほど珍しい茶碗なのだろう」と大切に箱に入れて有名な物知りの先生のところへ持っていきました。そして茶碗を見てもらいました。
その先生は手に取り茶を注いで殿さまと同じように見ましたが、
「おばあさん、わたしにもわからない。どうも不思議な茶碗だから大切にしておきなさい。」
と言っただけであとは何を聞いても言ってもらえませんでした。おばあさんはだれかれとなしにこの話をしました。
ある時その話を聴いたのか、茶碗を見せてほしいという人がやってきました。その人はちょっと見ただけで
「この茶碗を十両で売ってくれないか?」
とおばあさんに頼み込みました。しかしおばあさんがこの話を聴いてつい欲が出てきてしまいました。
「これは大した茶碗に違いない。この人が十両で買うというほどだから、都へ持っていけば百両で売れるかもしれない。」
とせっかく欲しがる人が来たのに断ってしまいました。
そしておばあさんは京の都へその茶碗を持っていきました。
京で骨董品の目利きをする人に見てもらいました。すると
「おばあさん、茶渋がひどくてよくわからないが、見たところ割れ目も傷もない。なのに茶が漏れるのが不思議だ。きっと殿さまはそれが不思議でどこから漏れてくるのだろう?とながめていたのであろう。この茶碗は一文の値打ちもないな。」
と言われてしまいました。
おばあさんはすごすごと帰ったそうでした。おしまい。
市町村 | 行方市 |
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旧市町村 | 玉造町 |
原文著者 | 本アーカイブのための書き下ろし |
原文著者(ヨミ) | カキオロシ |
生没 | 不明 |
生没 | 不明 |
媒体 | その他 |
収録資料名 | 本アーカイブのための書き下ろし |
収録資料名(ヨミ) | カキオロシ |
収録資料出版年月日 | 2019 |
言語 | JPN |
方言 | 標準語 |
備考 | 本作品は、以下の作品を参考にして書き下ろしたものです。 参考 鶴尾能子編 茨城の昔話 昔話研究資料叢書 7 三弥井書店 1972.05 pp.106-107 不思議な茶碗 原話話者 行方市玉造甲字上宿 堤一郎(原話採集時70) 再話 鶴尾能子 |
このおはなしが伝えられた地域